第2章) 平面図は暮らしの写しえ



1軒1軒の家はそれぞれの家族の歴史
平面図を見ると一軒一軒全部違う。家族構成や立地条件が変わってくるのであたりまえな事である。
しかしそれだけでなく、家は家族の育んだ暮らしの歴史が反映されているからである。
設計ではいかに 家族の生活 (暮らし) の姿を反映できるかがポイントとなる。
 
家の中をぐるぐる回る楽しさ
家の中で同じところを通らず回遊できるのは楽しい。たとえば、居間、食堂、台所、ローカ、玄関
そして居間と一周できると便利で楽しい。立体的にも回遊できたら良い。
一般の住宅では難しいのでせめて、吹き抜けを設けて視線での回遊性をつくる。
マンションがいまいち生活の楽しさに欠けるのは、部屋に回遊性がないからである。
 
部屋には特有の広さがある
良い家(平面図)は其々の部屋どうしのプロポーションが良い。良い暮らしは程良いプロポーション
を持っている。したがって暮らしの器である家も、良い家は程良いプロポーションとなる。
 
通風は必ずとる
昔の家は縁側、表座敷、裏座敷と南から北に大きく開いていた。子供のころ、夏、建具を開け放った
部屋で気持ち良く昼寝をした記憶があるが、風が通うれば夏も過ごしやすい。
 
プラン(平面計画)で風を通す
平面でたいてい南側、東側は大きな開口部があるので、北側、東側に風抜けのための窓を注意深く
設ける。南北に連続して部屋がある場合は必要に応じて開けることの出来る天窓や地窓の引き戸を
設ける、あるいは棚の一部に風抜けの開口部をさりげなく設ける。
 
断面で風を通す
プランでどうしても風通しが得られない場合は断面で考える。たとえば北側に押入れやローカがあり
窓を設けられない部屋では、トップライトや吹き抜けを介して風を通す。
 
常時、風を入れる
夏の夜の風は涼しい、夜中開けておける窓があれば、昼間熱くなった室内の壁や天井の熱を冷ます
ことが出来る。庇やこ格子などで雨天時、防犯に配慮する事で常時開放できる窓が出来る。
 
ワンルームに近い家ほど家族が集まる
家はいろいろな条件が整って作るのだが、基本的にあるものは家族が家族らしく、心置きなく住む
ためのもの。だから家族が常に肌で感じながら、一緒に住む家が良い。家の中で母親が料理する音
や子供がゲームをしている音、親父が新聞をめくる音が聞こえる。家族中の気配りが自然に感じ取れ
る家が良い。必要最小限の部屋を閉鎖型とし他の部屋は可能な限りオープンにする。
 
自分の部屋から他の部屋が見えたら楽しい
限られた敷地の中では難しい工夫しだいで、家の中から自分の家が見えるように出来る。
L型プランや中庭のあるプランあるいは、吹き抜けのあるプランであれば可能。自分の家の他の部屋
の明かりや人影の動く様子を見るのは楽しい。
 
2階のリビングは玄関をどこに置くかが課題
密集した住宅街などではやむおえず2階にリビング、ダイニングキッチンをつくることがある。
かなりオープンに出来る事や天井の形や高さなどある程度自由に出来る事など有利な条件となるが
玄関をどこに置くかが問題となる。屋外階段をつくり玄関を2階につくる、1階に玄関を置き吹き抜け
とからめて1階及び2階の連続性を強める、あるいは中2階に玄関をつくり1階、2階の距離を小さくす
る方法などがある。
 
家の中の端から端まで見通せるようにする
必要な部屋だけをつなげたような家は暮らしの豊かさに欠ける。それを救う方法として、どんな小さな
家でも端から端を見通せる部分をつくる。引き戸やッスライデングドアを使って必要なときに開閉でき
るようにし、開けた状態で見通せるようにする。この事は家全体をワンルーム的に扱うことも共通する。
 
家に帰って着替えをどこでするか
この事は案外考えていない。当たり前のように寝室や子供部屋で着替えると思っているようだが、
実際は玄関や居間が多い。そんな訳で玄関や居間にコートやカーデガン、靴下、タオルなどを収納
するタンス(ロッカー)を設ける。
 
内でもなく、外でもない所が楽しい
暮らしの様子をよくみると、室内外の暮らしを完全に分けることは出来ない。むしろ室内外の中間的
なところでの暮らしが多い。
テラス、縁側、庇、玄関先など中間的なところをもっと積極的に活用したい。テラスの床を木製デッキ
にしたり、透明な屋根を掛けたり、大きく開放の出来る建具を設けたサンルームを作ったり、車のない
ときの車庫の活用を考えたりといろいろある。
 
帰ってくる人が見える
車社会だから車が入ってくれば帰ってきたことが判るがそれだけでは寂しい。家の中から帰ってくる
人の様子が少し判るとあたたかく迎える準備が出来る、防犯上も良い。
キッチンや居間、食堂の窓から門扉方向が見えるようにする。道路から玄関がすぐ判るように庇を
工夫する。アプローチや車庫から玄関までの道路を工夫するなど、来る人 (帰ってくる人) をあたた
かく迎えいれる仕掛けをつくる。

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